40代での退職は、若年層に比べると必然的にハードルが高くなります。
そのため、「辞めたくても辞められない」という思いを抱えて生きている人も少なくありません。
確かに「会社が嫌でも自分さえ我慢すれば家族は安泰」というのもひとつの答えですが、それで家族が幸せになれる保証がないのもまた事実ではないでしょうか。
仕事での心労が原因で最悪の結果に至る事例は、世の中にあふれかえっています。
そんな「会社を辞めたい」と願う妻帯者にとって、退職に向けた最初のハードルになるのが「妻の理解」です。
私も1年かけて妻と話し合い、40代で会社を退職しました。(最下段にプロフィル)
二児の父で、かつては全国紙の記者を務めていました。
妻とは結婚して10年になります。
話を切り出したときは猛反対した妻ですが、退職後の受け止めはいかに。
当時に比べて生活もコンパクトになるなかで、あらためて妻に本音を聞いてみました。
転職を目指すにせよ、独立を志すにせよ、参考材料にしていただければ幸いです。
40代退職|妻にとってのプラス面
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
40代で退職した夫を持つ身として、妻はいまの生活をどのようにとらえているのでしょうか。
薄々気づいていたことばかりですが、意外な受け止めもあり、私としても有意義な記事になりました。
以下、妻の意見とともに、私の補足も交えてご紹介します。
健康になった
妻の意見
会社を辞めてもらってよかったのは、夫の健康の回復です。
夫の精神状態が一番ひどかったのは、退職するかどうかを迷っていたときでした。
うつ病を患う母の姿をそばでみてきたこともあり、当時の夫のようすは気が気ではありませんでした。
夫の苦しみは、家族の苦しみでもあります。
年中体調不良を訴えていたのが、いまは嘘のようになくなりました。
この先夫が再就職したときに心配するのも、きっと心の健康です。
最初、退職の相談をもちかけられたときは不安に押しつぶされそうになりましたが、いまは家族の健康が一番だと実感しています。
みふきの補足
実際、新聞記者時代は、慢性的なストレス状態で、ほぼ薬漬けの生活を送っていました。
妻は精神面でのリスクを強調していますが、とにかく体の調子も年中悪かったように思います。
突発性難聴や急性肝炎などのほか、脳からの電気信号が途中でショートするとても珍しい難病にもかかり、入院を余儀なくされたこともあります。
当時は入院中も給料が支払われる分、「サラリーマンをやっていてよかった」と感じましたが、そもそも「ストレス」が原因だったのかもしれません。
実際、いまは健康そのものです。
40代での早期退職により「表向きは白でもその実真っ黒な会社から無事に生きて出られた」といえるかもしれません。
幸せは家族で共有するものです。
帰りを待つ必要がなくなった
妻の意見
毎日夫の帰りを待たされていました。
明け方まで起きて出迎えるようなことはしていませんが、ドアが開く音で目が覚めることもありました。
晩御飯を食べるかどうかはっきりしない日も多く、とにかく苦痛でした。
私の友人もそうですが、女性は待たされるのをとても嫌うものです。
待たされるのを嫌う気持ちは、夫婦仲の良し悪しとは別だと思います。
「私の存在ってなんだろう」などと考えてしまうことさえありました。
一本連絡をくれればそれで済むのに…。
毎日家族そろって晩御飯を食べられるのは幸せなことだと感じます。
みふきの補足
「飲まねば仲良くなれない商習慣」はいまでこそ変わってきましたが、鮮度の高い有益な情報は「夜の席」で得られるものでした。
そのため、当時は「午前様の帰宅」が基本で、家族のために早く帰るという選択肢はありませんでした。
早く帰りたいという思いは常にありましたが、常識の外に追いやり「見ないふり」をしてきたのかもしれません。
ただ、アルコールに弱い体質に無理を重ねた結果、(ウィルス性の)急性肝炎を患いました。
会社からは「名誉の負傷」のような扱いを受けましたが、もし症状が劇症化していれば「名誉の戦死」になっていたのかもしれません。
子どもの面倒をみるようになった
妻の意見
夫が育児に参加してくれるようになりました。
生活発表会や授業参観などの行事にも顔を出せるようになり、下の子も夫になつくようになりました。
いつか巣立つ子どもたちにとって、お父さんと一緒にいられる時間は、すごく貴重だと思います。
夫が会社を辞めてから、家族の思い出がたくさんできたと思います。
これからも、家庭を犠牲にするような忙しい仕事に就いてほしくありません。
日刊紙の記者は締め切りに追われる宿命にあります。
ただ、締め切りが終われば自由になれるかといえば、実はそうでもありません。
個人の資質や部署などにもよりますが、私の場合、社内向けの不毛な仕事が山のように待っていました。
その手の雑務は、プライベートの時間を犠牲にしてこなしていました。
家族との時間は二の次、三の次です。
つまり、当時の私は家庭を顧みない「仕事至上主義」だったわけです。
ただ流されるまま、他人にいいように使われる人生なんて、きっとロクなことがありません。
家事を手伝うようになった
妻の意見
夫が会社を退職する前まで、家事はすべて私が一人でやっていました。
子育て同様、夫は一切手伝おうとしません。
あまり口には出しませんでしたが、正直、それがとても不満でした。
「家にいるのに夫は何も手伝わない」と不満を漏らす友達はたくさんいます。
ただ退職してからは、夫婦で家事を分担するようになりました。
負担が軽くなったことよりも、公平感が増したのがうれしいところです。
恥を忍んでありのままをまとめますが、記者時代、家事は妻の領分として一切かかわりを持ちませんでした。
食事をした後のお皿をシンクに持っていくことすら、妻に任せっきりでした。
「更生した不良のようなギャップ」とでもいうのでしょうか。
洗濯物の取り込みや皿洗い、風呂掃除などを担当するようになり、満足してくれているようです。
正直なところ、まだまだ「お手伝い」のレベルですが、子育ても家事も驚くほど時間をとられる作業です。
家計や主婦の苦労に対する理解も深まりました。
40代退職|妻にとってのマイナス面
妻の意見
一番大きなマイナスポイントは、収入が安定しないことです。
晩御飯の野菜を買うにしても、かなり値段に気を配るようになりました。
夫から退職したいという話を聞いたときは、とても不安になりましたが、どうにかなるものです。
もし夫の再就職が決まっても、いまの生活環境を変えたくありません。
お金がないなりに工夫するのも、案外楽しいものです。
「幸せの度合い」は夫の退職前とあまり変わっていないように思います。
市から学費の補助を頂くようになったのは、正直恥ずかしいところですが…。
みふきの補足
妻には申し訳なく思いますが、再就職しない限り、お金に対する不安は続くものと思います。
同じような境遇の人は、ともすると、自分にふがいなさを感じる人もいるかもしれません。
ただ、人生何とかなるもので、焦りは禁物です。
意識が「お金」一点に集中すれば、全体がみえなくなります。
会社を辞めるということは、ある意味で人生を好転させるチャンスをつかんだともいえるのではないでしょうか。
少なくとも私はそう思っています。
40代退職|最初は猛反発した妻
最終的には40代での退職を支持してくれた妻ですが、最初は猛反発しました。
妻からすれば、お金に不自由しない生活と老後の保障を奪われるようなものです。
当然、すんなりと受け入れられる提案ではありません。
「辞めて何するの?条件が悪くなるに決まっているじゃない!」
「うちの両親になんて説明するの?きちんと説得してよ」
その後約1年、妻と相談を重ねました。
この間、「辞める」「辞めない」の葛藤に苦しみ抜きました。
退職への不安に悶絶しました。
最終的に「辞めなくてはならない」という強迫観念まで抱え込む始末です。
そんな苦しむ姿を見ていられず、最終的には妻が40代での退職を後押ししてくれました。
「大切なのは家族。お金はどうにでもなる」と悟ったそうです。
いまは会社を辞めて本当に良かったと思います。
ただ、人によって条件、結果が異なるのも事実です。
もし40代での退職を検討されている方は、「人生観の整理」「貯金の上積み」「転職市場の精査」をしっかり行い、焦らずゆっくり計画的に進めていくのが大切です。
40代退職|妻の受け止めまとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、40代で夫が早期退職した妻の立場から、いまの生活についての受け止めをご紹介しました。
まとめは以下の通りです。
- 夫が健康になった
- 夫の帰りを待つ必要がなくなった
- 夫が育児に参加するようになった
- 家族で過ごす時間が増えた
- 家計は苦しいが幸せの度合いは退職前よりも増している
最後までお読みいただき、ありがとうございました。