40歳を過ぎるまで同じ会社に勤めていると、ある程度、自分の将来が見通せるようになってくるものです。
「自分にできることは限られている」「現実を受け入れるべき」と、最後までしがみつく決意の人の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。
反面、一度しかない人生の価値に気づき、40代ながらも違う道を選択をする人がいるのも確かです。
「自分の人生、本当にそれでいいのかーー」。
我慢を続ける人生の代償があまりにも小さな見返りである場合、転職や独立を検討するのもひとつの手です。
事実、いまの時代、一定のリスクを負ってでも会社を「退職」する40代は年間100万人を超え、うち50万~60万人に及ぶ40代の方が「転職」を実現しています。
妻子持ちの身ながら2017年、20年勤めた職場を円満退社し、現在に至ります。詳しいプロフィルは最下段にあります。
退職プロみふき (40代退職経験の元記者)
では、今回のテーマである40代の退職理由はどんなものでしょうか。
結論から申し上げると、40代の退職にまつわる「本音の部分」はなかなか表に出てきません。
そもそも40代の退職理由は、とてもデリケートな問題だからです。
今回は、国の統計やハローワークなどでの取材などをもとに、40代の退職理由の実像に迫ります。
取材を重ねるなかで、40代退職にまつわる本音も見えてきました。
一部、自分自身の体験談も交えてご紹介します。
Contents
40代の退職理由 終身雇用も終焉
ランキングをご紹介する前に、転職市場を取り巻く近年の環境について触れておきます。
居心地の悪い組織に見切りを付ける転職者の数は、実は年々増加傾向にあります。
総務省の調べによると、2019年の転職者数は35歳~44歳で66万人、45歳~54歳で57万人といずれも高い水準をキープしています(出典:総務省統計トピックス=2021年10月時点での最新データ)。
同省が労働力調査を始めて以来、過去最高の規模となり、また、55歳以上の転職者比率も過去最高を更新しました。
2020年の転職者数は世界的なパンデミックの影響で総数こそ減少しているものの、給与への不満や将来不安を背景に、転職希望者自体は増加しているもようです。
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
40代の退職理由 厚労省の調査では…
さて、年間100万人を超える40代退職者ですが、その理由は一体何だったのでしょうか。
サラリーマンらの退職理由を網羅した公式データは、厚生労働省による「雇用動向調査」のなかでまとめられています。
最新データとなる令和2年度上期の調査結果をみると、40代離職理由のトップ3は以下のイメージになりました。
40~44歳
- 1位 その他 34.9%
- 2位 会社の将来性 12.2%
- 3位 労働条件の不満 9.7%
45~49歳
- 1位 その他 35.5%
- 2位 給料の不満 21.7%
- 3位 会社都合 7.8%
いかがでしょうか。
回答の3割が「その他」に集中している時点で、アンケートの設計ミスのように思えなくもありませんが、むしろ、それだけ40代の退職理由を把握するのは難しい作業といえます。
実際、過去のデータをさかのぼって調べてみると、40代退職理由のトップ3は、常連の「その他」を除いて常にバラバラ。
とくに2021年は世界的なパンデミックによるイレギュラーな影響が出ているといえますが、やはり「その他」が3割を占める構図は変わっていません。
この手のデータは、あくまでも参考程度にとどめておくのが無難といえそうですが、なぜ40代の退職理由は正確な情報が出てこないのでしょうか。
また、40代の退職に秘める本当の思いは、どこにあるのでしょうか。
以下、順番に解説して参ります。
40代の退職理由 なぜ出てこない?
40代の退職理由として、基本的な軸になっているのは「現状に対する不満」です。
ただ、何に対する不満が最も多いのか、40代退職者の本音はなかなか表に出てきません。
より良い条件を求めて転職を決める人が増えているのも事実ですが、取材を重ねるなかで、そんなに単純な構造ではないことが分かってきました。
40代退職者が退職理由を示しづらい理由は、大きく3つ。
以下、理由別にまとめました。
恥ずかしくて言えない
40代の退職はとてもデリケートな問題です。
ここは経験者だからこそ明言できるポイントでもありますが、本人からすれば「恥ずかしくて人に言えない退職理由」がたくさんあるわけです。
たとえば、こんなイメージです。
- 管理職への昇格を後輩に抜かされた
- 人格者で通る上司が自分だけに嫌がらせをしてくる
- 後輩や同僚の目が冷ややか
- 仕事の質と量が変わりプレッシャーに押しつぶされた
ねこ吉
みふき
一言では説明できない
40代の退職理由は、人には言いづらい理由を含めて、ひとつに絞り切れないケースが目立ちます。
そもそも20年選手が会社を辞める決断は、そんなに軽いものではありません。
仮に「労働条件への不満」や「人間関係のもつれ」などが一つのきっかけになったとしても、問題はもっと根深く、複雑に絡まっているとみるのが自然です。
一般的にも、「労働条件」「仕事内容」「人間関係」の3項目のうち、2つ以上大きな不満がある場合は転職を前向きに検討すべきとされます。
事情も立場も多種多様な40代の場合、退職理由が一段と複合的かつ繊細になるのは当然です。
つまり、40代の退職理由は「門切り型の質問項目」に収まる代物ではないわけです。
私自身、退職経験者の立場からみて、40代退職理由のランキングにまったく「体温」を感じない理由もそこにあります。
本音はリスクを伴う
一般的な会社の風潮として、退職者・転職者は「裏切り者」のそしりを受けたり、「ドロップアウトの烙印」を押されたりする風潮があります。
つまり、退職理由が「ヘッドハンティングを受けた」にせよ、「重責に耐えられなくなった」にせよ、本当の理由を話しづらい環境にあるわけです。
不要な軋轢(あつれき)を避けるためにも、「誰も傷つかない無難な退職理由」を示すのはごく自然な流れといえるでしょう。
そもそも、本当の退職理由を告げるのはご法度です。
とくに転職する場合、再就職先に対しての「表向きの退職理由」が必要となり、この際「事実の書き換え」が極めて重要になってきます。
「本当の退職理由」にバイアスがかかるのは、その性質上、必然といえるわけです。
40代の退職理由 ハローワーク職員に聞いてみた
ハローワークのベテラン職業相談員に、40代の退職理由について聞いてみました。
同相談員は「確かに本音の部分がなかなか見えてこない」と話し、40代での退職はとてもデリケートな問題である点を強調。
その上で「些細(ささい)なことで心に負った深い傷も、本人にとっては退職理由のひとつになり得る」と説明しました。
また、「40代で退職した方の多くが何らかの秘密を抱えているように感じる」との見方を示す一方で、その根本になるのは「人間関係や心身の疲れなどシンプルな問題にあるのではないか」と持論を述べました。
最近の傾向については「アンカー・キャリア(譲れない価値観)へのこだわりを捨てきれず、長年勤めた職場を去る40代が増えている」としました。
40代の退職理由 私のときは…
私は2017年、20年勤めた会社を退職しました。
当時は日刊発行の全国紙で記者を務めていました。
いま10歳の娘と7歳の息子がいます(2021年4月時点)。
当時感じた不満や渇望の一部を並べてみると、以下のイメージです。
- 上司に対する嫌悪感と隷属への抵抗
- 「賞味期限」が迫る子供との時間の確保
- 人生観・死生観の変化
- デキる後輩への嫉妬
- 同調圧力への嫌気
- 社内向けの仕事に忙殺される日々
- 見苦しい自分の生き方への嫌気
- etc…
窮地を救った上司に裏切られたり、後輩に管理職への昇格を抜かされたり、それを周囲に哀れまれたり…。
40代で経験した「腹に据えかねる出来事」は数え切れないほどあります。
ただ、20年のサラリーマン生活の中で打たれ慣れている分、退職理由は不満だけで語れないのも本音です。
しいて挙げるなら「ここは自分の居場所ではない」と感じ続けてきたあたりかもしれません。
ただ「労条件への不満」や「人間関係」など、明確な理由がある場合は、計画的な転職を強くおすすめします。
40代の退職理由 まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は40代の退職理由について、ハローワークで取材しました。
なかなか本音が表に出ない事実の裏が取れた格好です。
まとめは以下の通りです。
- 40代の退職理由はとてもデリケートな問題で本音は表に出てこない
- しいて挙げるなら「人間関係のもつれ」が多いものとみられる
- 40代の退職理由は一つに絞り切れず一言で語るのが難しい
- 転職に表向きの退職理由が必要になるため本音は語られにくい
最後までお読みいただき、ありがとうございました。