長年勤めた会社を辞めるとなると、それ相応のエネルギーが必要で、なかなか踏ん切りがつかないものです。
とくに40代の家族持ちの場合、先々への不安に固い決意が鈍ってしまうのではないでしょうか。
「覚悟を決めろ」とみずからを奮い立たせたところで、足がすくむのは仕方がないことです。
実際、退職届(辞表)の提出はその後の人生を決定づける大きな決断になります。
ただし、「このままで一生を終えたくない」「転職したい」と願う人にとっては、どうしても超えねばならない壁ともいえます。
私もそうした経験をへて、いまがあります。
40代で二児の父ながら、転職と独立の両にらみで新聞社を退職しました。
当時に比べ収入は激減しましたが、現在の生活に差して不満はありません。
退職するか否かで1年ほど悩みましたが、妻との話し合いがまとまった後は、ちょっとした工夫によってスムーズに離職することができました。
私がとった方法とはいかなるものか。
「退職までのスケジュール設定」「勢いに力を借りる」などがとても効果的でした。
今回は、退職に踏ん切りのつかない40代の方々に向けて、私が実践した方法をご紹介します。
万人向けに一般化したものではありませんが、実績のある生きた情報です。
とくに早期退職などを検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
※下段吹き出しの登場人物
ねこ吉:退職を目指すサラリーマンのネコ
みふき:筆者
Contents
退職への躊躇 問うべきは覚悟ではない
ねこ吉
みふき
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みふき
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みふき
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
実際、長年勤めた会社からの退職に不安はつきものです。
もちろん、勇気ある決断で人生が好転するとも限りません。
考えれば考えるほど、遠のく退職への決意――。
終身雇用制度が幅を利かせた時代のなかで、浮世の波にもまれてきた40代にあっては、とくにその傾向が顕著だといえます。
どうしても退職届が出せない場合、実はそれが正しい選択かもしれません。
実際、いったん組織の保護から離れると、失うものがたくさんあります。
参考までに、私が記者を辞めて失くしたものを以下に書き出してみました。
太い黒枠が転職で取り戻せる可能性があるもの、そして灰色のボックスが脱サラを失敗したときに支払う代償です。
- 社歴
- 肩書
- 人脈
- 決まった日に支払われる給料
- 自由に使える経費
- 名刺一枚で誰にでも会える特権
- 後輩
- 安定した収入
- 老後の安全保障
- 社会的信用
上記のリストはあくまでも私個人の実績にもとづくものですが、人によっては「良好な夫婦仲」、「両親の信頼」、「社会とのつながり」などを失うリスクも負うことになります。
もちろん逆もしかりで、退職しなければ手に入らないものがあります。
退職願を躊躇なく提出 具体的な方法は?
具体的な退職の準備として、まず最初に確認しておくべきは「就業規則」です。
退職願を提出したところで、すぐに勤め先を辞められるわけではありません。
退職願の提出期限は引継ぎや手続きを勘案して「希望日の1か月前」に定める会社が多くなっています。
また退職金の上積みが期待できる「早期退職優遇制度」を利用する場合、退職希望日と提出期限のスパンはもっと長くなるのが一般的です。
このあたりのルールは、必ず押さえておかねばなりません。
仮に在職中に転職活動を進め、再就職先を決めておく場合でも、就業規則は目を通しておくべきです。
これを前提に、私がスムーズな退職を進めていくうえで、とても効果的だった方法をご紹介します。
⓵タイムリミットを決める
退職への決意にくさびを打ち込むためには、タイムリミットの設定が有効です。
就業規則に定められる退職のルールを参考に、具体的に「いつまでに辞める」かを決めてしまうわけです。
退職への道筋とその後の身の振り方を「具体化」していくことが重要です。
具体化していくうちに、退職にかかる自分の本心もみえてきます。
ただし「転職ありき」の場合はこの限りではありません。
在職中に、自分の求める条件に合った再就職先を探しておくべきです。
次の会社が決まった後は、転職先を尋ねられても素直に答えず、言葉を濁すのが基本です。
とくにキャリアアップを目指して同業他社に鞍替えする場合は、秘密にしておく方が無難です。
⓶勢いの力を借りる
何かと不安の多いミドル世代の退職は、紛れもなく勢いが大切です。
とくに退職願を出す段になると、いくら堅い決意があっても足がすくんでしまうもの。
とはいえ、みずから設定したタイムリミットを撤回し、仕切り直してしまうと「辞め時」を失いかねません。
辞めたいけど怖い――。
私もそんなジレンマに立たされましたが、ある方法でこれを解決しました。
どうしても勇気が出ないときの秘策です。
私がとった秘策とは、上司から「腹に据えかねる命令」が出るのを待つことです。
つまり、理不尽な命令に対する憤りの勢いに力を借りて、退職願を提出するわけです。
タイムリミットとの相乗効果があって、はじめて有効に機能する方法です。
このあたりの話題は「勢いによる退職のメリットとデメリット」をまとめた記事で詳しく紹介しています。
⇒勢いによる退職のメリットとデメリットをまとめた記事はこちら。
③あらかじめ引継ぎをしておく
悪い印象を残したまま離職すると、その後の転職活動に影響の及ぶ恐れがあります。
サラリーマンの人脈は馬鹿にできず、転職希望先の採用担当と古巣の社員が個人的につながっているケースが往々にしてあるからです。
実際、古巣の悪評により採用が見送られるケースを何度か目の当たりにしたことがあります。
そのあたりの話題は別記事のなかで触れていますので、興味のある方は参考にしてください。
後腐れなく退職するために、とくに注意したいのは引継ぎです。
社員が一人抜けたところで、組織が傾くことなどあり得ませんが、長年同じ会社に勤めていると「オリジナルのスキル」が身に付くものです。
それは、特定の取引先と仕事を円滑に進めるノウハウだったり、クライアント受けする企画立案のツボだったり。
そんな大切な財産を組織が失うと、残される後輩やお世話になった同僚らにも迷惑をかけかねません。
辞意を示す前にあらかじめ、後進に「継承」しておくのがベストです。
すでに引継ぎを済ませているという事実は、周囲に「離職への決意の固さ」として伝わり、退職を一段と円滑なものにしました。
ただし、退職の準備は極秘裏に進めるのが鉄則です。
④有休消化の一部を「返上」する
世間はずっと「真面目に生きてきた人」よりも、なぜか「更生した不良」の方に高い評価をつけたがるものです。
これは「ゲインロス効果」と呼ばれるもので、プラスとマイナスの変化量が大きいほど人の心に与える影響が大きくなる心理作用です。
退職するに当たり、私もこの効果をフル活用しました。
実際にとった方法というのは、「すべて使い切る」と宣言していた有休を、頃合いを見て、途中で半分返上するものでした。
一度本社から反感を買う形をつくり、後にこれを解消した格好です。
もし、本当にフルで有休消化に入っていたならば、大切な仕事に大きな穴を開けることになっていました。
会社からすれば、仕事を途中で投げ出し退職する行為は、ある種の仕返しのように映ったに違いありません。
こちらとしては、実はもとより、後ろ足で砂をかけて退職する気などありません。
つまり、最初から有休を半分返上し、手持ちの仕事を片付ける腹積もりだったわけです。
また、この方法がとても上手くいったのは「現場の窮状を知らしめる目的」を兼ねていたためです。
しわ寄せが行きそうな社員に、こっそり本心を伝えていたのもミソです。
有休消化を半分返上した段階で、種明かしをしたところ、私の退職に向けられた感情は憎悪から好感へと転換しました。
⑤パートナーと足並みをそろえる
退職を目指すに当たり、パートナーの同意を得ておくのが理想です。
人によっては難航も予想されます。
私の場合、妻の賛同を得るのに1年近くかかりました。
ただおかげ様で、夫婦関係はいまも良好です。
その一方で、妻に何も言わずに辞めてしまう人もいます。
実際、転職や独立が上手くいきさえすれば、実際のところ問題はないのかもしれません。
ただ一度つまづくと、その影響が夫婦関係に波及する恐れも出てきます。
退社すれば古巣との縁は絶たれますが、家族との関係はずっと続きます。
また、退職後の新しい生活を始めるに当たっては、必ずパートナーの協力が必要になります。
このあたりは夫婦の問題であり、要らぬお世話かもしれませんが、大きな決断を下す際は家族の同意を得るのがおすすめです。
躊躇なく退職願を出す5つの方法 まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は躊躇なく退職願を出す5つの秘策をご紹介しました。
まとめは以下の通りです。
- どうしても退職願を提出する勇気が出ないときは、会社を続けるのが正解
- 退職はあくまでも手段であり目的ではない
- 場合によっては休職して転職活動に挑戦するのも手
- 退職のタイムリミットを強く意識すると上手くいく
- 怒りが爆発する瞬間を待って計画的に退職届を出すとスムーズ
- 引継ぎは退職の意思表示よりも前に済ませておくべき
- 「ゲインロス効果」の活用も円満退社のコツの一つ
- パートナーの同意は得ておくのがおすすめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。