上司の理不尽な言動や社内での不当な扱いに、たまった鬱憤(うっぷん)が爆発――。
そんなシチュエーションに立たされて「こんな会社辞めてやる」と息を荒げたことはありませんか?
なかには勢いに任せて、いけ好かない上司に辞表を叩きつけてしまったという人もいるかもしれません。
実際、長年勤めた会社を退職するには、それ相応のエネルギーがいるもので、「勢い」というのもまた、重い決断を後押しする力になります。
ただ、怒りの感情に任せて会社を辞めてしまうと、後が大変。
とくにミドル世代の退職は、計画性が命といえるでしょう。
かくいう私は、家族持ちの身でありながら、20年勤めた会社を40代で早期退職しました。
もともとは全国・日刊紙で記者を務めていました。
当時に比べ収入は激減しましたが、いまの暮らしには満足しています。
ただし、退職するに当たってしっかりと準備をしていなければ、また違った結果になっていたかもしれません。
つまり勢いで会社を辞めてしまうと、退職後の準備が整わぬままになり、転職活動はおろか、その後の人生にも影響が出る恐れがあります。
とはいえ、勢い任せの退職もまったく利点がないわけではありません。
余りおすすめできない手段ではありますが、もし転職先を見つける前に退職願を提出してしまった人は、そのインセンティブを最大限に生かすべきではないでしょうか。
というわけで今回は、扱い方によって毒にも薬にもなる「勢い」について、退職という場面での「メリット」と「デメリット」をまとめました。
下段吹き出しの登場人物
ねこ吉:退職を目指すサラリーマンのネコ
みふき:筆者
Contents
勢いで辞めるとどうなる?皆のつぶやき
勢いに任せて会社を退職した先に、どんな現実が待っているのでしょうか。
路頭に迷う?
それとも、勢いに乗って新たな人生が切り開かれる?
まずはTwitterから参考になる情報をピックアップし、ご紹介します。
退職のリスクを勘案、求職へ
話し合いの結果、休職することになりました。正直勢いで辞める一心で、退職しか視野になかったのですが、休職を提案されました。退職届も書いていたので悩みましたが、コロナ禍で転職活動が難航するかもしれない不安と、無職になると社会的信用も失ってしまうこともあり、提案に応じました。
— ムラタシユウ (@muratashiyuu) July 24, 2020
当然ながら会社を辞めること自体、リスクを負うことになります。
この方のように休職や異動希望を出し、気持ちを整えたり、環境を変えたりするのも手です。
もし退職を決意したのであれば「何を求めて辞めるか」を明確にしておくのが重要です。
上司が嫌いで退職、住まいを実家へ
社長・副社長・相談役が嫌いだから(気に食わない)と言って勢い?で退職したパワハラクソ上司(43歳)はどうやら今は実家に居るらしい・・・笑
まぁ、どういう事情でかは知らないけど・・・
次の職も決めずに辞めていったらこうなるよな・・・笑#会社 #職場 #パワハラ #クソ上司 #退職
— ひろし。 (@Hi6464) July 22, 2020
43歳で退職した方は、あまり部下に好かれていなかったようですが、実家での両親との同居は、退職者にとって検討すべき選択肢の一つです。
我が家もある事情で半分同居の状態だったことがありますが、二世帯が同居すれば、家賃、食費、水道光熱費が相当圧縮できることを痛感しました。
また両親が高齢の場合、身近なところで生活をサポートできるようになるのも同居の利点です。
ただ実家への同居は、家族の同意を取り付けるのが困難なケースが多いうえ、嫁姑問題などのリスクも考慮する必要があり、慎重な判断が求められます。
無職を許してくれた親
昔勤めていた職場で精神擦り減らしてて(今思えばそんなにつらいか?と思うけど当時はつらかった)、親に言ったら「そんな会社なんか辞めちまえ!」と返ってきて、その勢いで退職願を提出したなぁ。
その後、無職になっても許してくれたのはデカかったなぁ。>>RT— はたけ☆SOUL STIRRING (@Htk_mgS991311) July 21, 2020
勢いで会社を辞めることに対し、周囲はあまり良い評価をしてくれません。
「無職になって許してくれたのはデカかった」と感慨を漏らすのもうなずけます。
不意打ちの形で会社を辞める場合、両親はもちろん、義理の両親との関係に亀裂が入るケースも念頭におかねばなりません。
私の場合、退職するに当たり両親には説明を尽くしましたが、それでも失望が大きかったようで、しばらく関係が悪化しました。
傾向としては、サラリーマン人生を送った年配ほど、理解を得るのが難しいのではないでしょうか。
勢いに乗って勝ち取った再就職
「10%の、謎の自信」分かります😌
勢いで退職して、
その日に就職先を見つける
↓
次の日に面接の予約
↓
面接
↓
次の日に内定をいただく🙌勢いと、スピードもあると強いです😌
— みゆき🌸 (@ssdsshkkrr) July 16, 2020
「経験者ならではのツイート」といったところでしょうか。
本サイトのテーマとは真逆の考え方ですが、「勢いとスピードがあると強い」というのも事実だと思います。
また職活動が長引くと、自堕落な生活に働く気力をなくす人も少なくありません。
ただし、勢いに乗って転職先をつかむには、運も味方につけねばならない点を留意すべきです。
とくに40代妻子持ちの方は、勢い任せの退職には慎重な判断が求められます。
退職に「勢いの力」は有効 ただし飲まれるべからず
実際のところ、会社を辞めるのに「勢いの力」を借りるのはとても有効な手段です。
実は私も勢いの力を借りながら、20年勤めた新聞社を早期退職しました。
とくに40代での退職は、なかなか踏ん切りがつきにくい分、勢いはとても重要な要素といえます。
ただし、衝動的かつ無計画に離職に踏み切るのは、あまりおすすめできません。
私の場合、退職願を提出するタイムリミットをあらかじめ設定しておき、上司から「腹に据えかねる命令」が出るのを待ちました。
つまり、理不尽な命令に対する憤りに力を借りながらも、計画的に退職願を出した形です。
勢いの力は退職をスムーズに進めるためのエネルギーになりますが、計算の上、「最後の一押し」として活用すべきではないでしょうか。
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
勢いで退職するデメリット
勢いで会社を辞めてしまう最大のデメリットは、退職後の準備が手薄になることです。
とくに40代の転職活動に至っては、自分の求める条件に合う会社がそう簡単に見つかるものでもありません。
就職活動も長期戦になる可能性が十二分にあります。
そんなとき、一家が食いつなぐには潤沢な貯金が必要になります。
パートナーの稼ぎだけで家計を支えられぬ限り、最低でも1年分の生活費に相当する「貯金」が必要です。
そうした意味で、転職活動が許されるのは貯金が尽きるまでといえるでしょう。
つまり、怒りに任せて無計画に退職してしまうと、退職後の備えが甘くなり、転職活動に専念できる期限が必然的に早まってしまいます。
さらに、心の整理がついていない状態での見切り発車という点でも、勢い余っての退職は危険です。
冷静になった途端、急に怖くなって辞意の撤回を求める人もありますが、いったん会社に退職届が受理されてしまえば、原則もう後戻りはできません。
もし会社側が新たな人材を内定してしまえば、退職希望の取り消しはもはや絶望的と考えておくべきです。
また、怒りの感情に委ねた退職は、周囲への説明も事後になり、あらかじめ話を通しておくべき相手に対して義理立てできなくなります。
パートナーはもちろん、両親や義理の両親らとの関係も崩しかねません。
かつて、給料・ボーナスが数年間大幅にカットされた取材先で「離婚ラッシュ」が起きたのを目の当たりにしました。
突然の退職は、パートナーからすればそれ以上のインパクトがあるのではないでしょうか。
勢いで退職するメリット
勢いで仕事を辞めるのは、余計なことを考えず、一足飛びに退職する「手っ取り早い手段」ともいえます。
こみ上げる不安にも邪魔されず、望み通りの結果を出せるわけです。
自分にも他人にも隙を与えないという点で、退職への最短距離を走る形といえそうです。
実際のところ、「職業選択の自由」が日本国憲法で認められる以上、離職を止める権利は本人以外、誰にもありません。
私の身近なところにも、パートナーへの相談なしに突然会社を辞めた人がいましたが、結果的に脱サラを成功させました。
かねてより退職・転職が視界に入っていたのであれば、一概に責められるものではないと思いますが、夫婦関係に亀裂が入ったり、円満退社が難しくなったりする点には注意が必要です。
また、引継ぎをしっかり行うなど、社内に対する「その後のフォロー」も欠かせません。
もうひとつ、退職後の転職活動には、大きなインセンティブがあります。
それは、転職活動に専念できることです。
在職中の転職活動は、必然的にさまざまな制約を受けます。
転職を希望する会社の面接と外せない仕事がバッティングするケースなども想定されます。
逆に退職後は。転職活動に心置きなく力を注げます。
また毎日、転職サイトやハローワークで仕事探しをしていると、「好条件の仕事」を探り当てる嗅覚が鋭くなります。
背水の陣で臨む退職後の方が、こうしたスキルも身につけやすいといえるかもしれません。
それでも仕事探しは「退職前」が基本
勢い任せの退職には一長一短がありますが、結論から言うと、仕事探しはやはり「退職前」がおすすめです。
安全地帯から転職先を探せるのは、ある意味で、在職者だけが持つ特権です。
有望な転職先が見つからなくても、「取り返しがつく」点もとても重要なポイントです。
「いますぐ辞めたい」という人も、一呼吸おいて、まずは転職市場の「下調べ」から始めてみてはいかがでしょうか。
退職するための準備は、それからでも遅くありません。
もっとも、やるべきことは山ほどあります。
- 妻や元上司、両親との話し合い
- 仕事の引継ぎ
- 貯金の上積み
- 副業への挑戦
- 転職市場のリサーチ
- 税金・社会保障関連の下調べ
- 保険の見直し
- 格安スマホへの切り替え
- 家賃の安価な借家への引っ越し
- etc…
こうした細かい積み上げが後々必ず効いてきます。
私自身、仮に何の準備もしないで退職していたならば、人生設計の大幅な変更を余儀なくされたに違いありません。
そんな失敗を犯さずに、どうか「本当の自分のいるべき場所」をみつけてください。
それは案外、いまの勤め先かもしれません。
勢いでの退職 まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は勢いに任せた退職について、メリットとデメリットを解説しました。
結論としては、退職は計画的に進めるのがおすすめです。
まとめは以下の通りです。
- 退職に勢いの力を借りるのは有効だが、計画性のなさはリスクを伴う
- 退職後に備えた準備もおろそかになりがち
- 周囲に義理を欠く恐れがある
- 退職願が受理されれば原則撤回するのは厳しい
- 勢いでの退職は、あれこれ余計な心配をせず最短距離で結果を出せる
- 退職後の転職活動は仕事に邪魔されず専念できるメリットがある
- 転職活動に短期決戦の勢いが伴う
- おすすめは安全なところからじっくり自分の人生に向き合える在職中の転職活動
最後までお読みいただき、ありがとうございました。