年齢のハンデに足を引っ張られ、なかなか光が見えてこない40代の職探し――。
書類選考の段階で予選落ちを繰り返すやるせなさは、きっと経験した者にしかわかりません。
その重要書類となる職務経歴書こそが、40代の求職者がぶつかる最初の壁です。
とくに書類作成時に筆が鈍るのは、選考の判断材料として重視される「志望動機」ではないでしょうか。
確かに志望動機は、理論武装するのが難しく、ともすると抽象的な理由に逃げてしまいがちです。
解決の糸口は、やはり「説得力のある志望動機」をひねり出す以外にありません。
とはいえ、漫然と思案を巡らしたところで、成果はあまり期待できないのも事実。
ただし、ここでお伝えする方法を実践すれば、志望動機のクオリティは必ず高まります。
そもそも志望動機と退職理由は「セットで作り上げていくべきもの」で、効果的にまとめる方法が確かに存在します。
本サイトを運営する私みふきは、もともと全国・日刊紙の記者を務めていました。
二児の父で歳は40代。
皆さん同様、私も長年勤めた職場に見切りを付けた口です。
ただライティングに関しては、20万人の読者を相手に日々研鑽(けんさん)を積んできた身として、一日の長があります。
20年のキャリアのなかで、後進も10人ほど指導してきました。
そんなプロの端くれとして今回は、持てるスキルと知識を総動員し、選考通過率を格段に高める「40代の志望動機の書き方」を徹底解説させて頂きます。
記事の執筆に当たり、転職支援の専門家や経営者らへの取材も行いました。
記者ならではの「秘策」も公開していますので、書類選考突破を目指す同世代の方は、是非最後までお付き合いください。
※下段吹き出しの登場人物
ねこ吉:退職を目指す40代サラリーマンのネコ
みふき:筆者
Contents
【40代】志望動機は中高年ほどひねり出すのが難しい
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
志望動機をまとめる作業は、社会にもまれてきた40代ほど難しく感じるものです。
「本音と建前の使い分け」の大切さを知っている分、不用意なことが書けなくなるからです。
確たる理由が説明できないケースでは「何とか辻褄(つじつま)を合わせて書いている」というのが世間相場ではないでしょうか。
とはいえ、苦し紛れの理由を書き連ねたところで、40代の転職希望者が書類選考を突破するのは困難です。
兼任の採用担当者にさえ、簡単に見透かされてしまいます。
志望動機の作成は、よほど明確な理由がない限り、必然的に難易度の高い作業になります。
ただしそこをクリアしない限り、40代転職希望者が予選を勝ち上がることができないのも確かです。
そのためにもまず、志望動機の構造を理解しておく必要があります。
【40代】志望動機の例文
詳しい解説に入る前に、イメージをつかんでもらいやすくるため、以下に志望動機の例文を挙げました。
技術営業職で、同業他社への転職を目指す40代のケースを想定したものです。
本稿の要所要所で解説用資料としても用いるため、ざっと目を通して頂ければ幸いです。
ただし、ここでひとつ忠告差し上げたいのが「ひな形の流用」についてです。
どんなクオリティのものであれ、ひな形の流用はあまりおすすめできません。
40代転職での重要な判断材料となる志望動機は、ひな形をベースにまとめたところで上手くいかないためです。
本稿を最後まで読み進んで頂ければ、その理由も腑に落ちるものと思われます。
株式会社〇〇 御中
〇月〇日
氏名:〇〇
志望動機書
志望職種:技術営業職
最終職歴:〇〇株式会社(東証一部上場、資本金〇〇、従業員数〇人)営業本部〇〇支店技術営業課係長
在職期間:〇年
1、志望理由
〇〇市場への進出を目指される貴社の一戦力として、私のキャリアをお役に立てて頂きたく、求人に応募いたしました。お役立ちのポイントとしましては、大きく⓵〇〇市場のお客さま〇社との太いパイプがある⓶(潜在的なニーズの所在を把握しているため)〇〇市場開拓の水先案内人が務まる――の2点になります。
経緯
前職では、創業以来続く一社完結の伝統のもとで(担当顧客〇社からの)追加業務の受注拡大に力を注いでまいりました。お客さまから「お抱えのフィールドエンジニア」として信頼を賜っていることもあり、営業成績は〇年連続でベスト〇(昨年は〇支店の担当〇人中〇位)を維持しております。
ただ、一社完結型のビジネスモデルには、ラインアップの面に構造的な問題があり、運用上の次善策でお客さまの要望をカバーするにも、一個人の力だけでは限界がありました。お客さまからビジネスパートナーとしての信頼を受けるほどに「適切なソリューションを提供したい」という思いは増すばかりでした。40代の節目に自らの仕事観を見つめ直すなか、長年のじくじたる思いと決別する決心を固め、現在に至ります。
2、貴社にこだわる理由について
私のキャリアが生きる場であり、また、営業哲学が一致している点からも、貴社への入社を強く希望しております。〇〇までをカバーする充実したサービスラインアップはもちろん、異業種との協業を進める実効性の高い事業戦略も、〇〇業界では前例がありません。お客さまに最適なソリューションを提供できるのは、貴社をおいて他にないものと確信しております。
また、カスタマーファーストの経営理念のもと、他社設備の無償メンテナンスに取り組む貴社営業部の営業マインドは、かねがねお客さまの口からも伝わってまいりました。「担当顧客との相互利益」を追求し、20年のキャリアを重ねてきた身として、強く共感を覚える次第です。
応募書類のなかには、お客さまから賜った推薦状も同封させて頂いております。是非一度、詳細についてご説明の機会を与えて頂きますよう、お願い申し上げます。
志望動機の目標は、「一度会ってみたい」「話ぐらい聞いてみてもいい」と思ってもらうことにあります。
そうした意味で「自己PRにまつわる情報はすべて出し切らない」のも有効です。
【40代】志望動機はなぜ重要?
選考の各ステップを通過するごとに、転職市場での「人材としての価値」が高まる事実をご存知でしょうか。
採用担当者は常に、自分の判断が正しいかどうかを知るための「よりどころ」を求めています。
実はそのひとつの手がかりになるのが「選考通過の実績」です。
つまり「他企業で一次面接を通過し、現在審査待ち」という情報は、採用担当者から見ると「人材としての価値の裏付け」に当たるわけです。
そうした好循環を起こす第1ステップになるのが「書類選考」になるわけですが、なかでもとくに志望動機は「採用担当者が重視する情報」として知られます。
企業は人生をかけて職務に臨む人材を求めているだけに、志望動機が重視されるのも、当然といえば当然です。
ただ、採用担当者が志望動機を「重宝」する理由については、あまり知られていません。
実はそこからも、まとめるのが難しい志望動機の本質がみえてきます。
採用担当者の視点でみると…
すでにお気づきかもしれませんが、志望動機には、数字などの客観的データと同等以上に「誤魔化しがききづらい」という特徴があります。
それは「退職理由」や「即戦力としての根拠」などが複雑に絡み合う志望動機の「構造上の性質」に起因します。
「退職理由との一貫性」、あるいは「実績との整合」がなければ、ただちに理論破綻を起こすのが志望動機です。
つまり、採用担当者からみた志望動機は「重要情報にして真偽を見極めやすい判断材料」といえるわけです。
実際、ベテランの採用担当者になると、応募者の志望動機にざっと目を通すだけで、「おおよその力量」や「職務への適正」などがつかめるとされます。
また、採用担当者が応募者を推薦するのにも、必ず社内説明の場で「根拠」が求められます。
当然ながら「人の良さ」だけで選考をパスすることはできません。
明確な「根拠」のもとに仕上げられた志望動機こそが、採否を決める判断材料としての価値があるものといえます。
逆に、志望動機のクオリティを高めることができれば、万人にとって書くのが難しい分だけ、40代の転職希望者にも大きなチャンスが巡ってくるものといえます。
志望動機書の作成を
志望動機は、企業側からの指定がない限り、履歴書や職務経歴書のなかに併記するのではなく、別途「志望動機書」を作成して提出するのがベストです。
とくに、ハンデの大きい40代の転職では必須といえます。
理由は大きく3つあります。
- ペーパー1枚分、即戦力としての価値を存分にアピールできる
- 職務経歴書の自己PR欄に書き切れなかった情報を補足・追加できる
- 熱意を「態度」で示すことができる
自己PRは、文字量を増やして強調し過ぎると、逆効果になるリスクがあります。
自己PRはその本質として「自己主張」に当たるからです。
人物としての「クセの強さ」や「扱いづらさ」を印象付けてしまっては、元も子もありません。
これに対して志望動機は、「なぜ当社なのか」という根本的な企業の質問に対し、ある種の「説明責任」を果たすためのものです。
つまり、職務経歴書の自己PR欄でカバーし切れなかったアピールポイントについて、ある種の正当性をもって補強できるわけです。
自己主張の色が強い「自己PR文」を別途一枚の用紙にまとめて提出するよりも、志望動機書のなかで合法的に伝えるのが得策といえます。
志望動機書はA4のペーパー1枚にまとめて書きます。
字体はビジネス向けのスタンダードなフォント「明朝体」を用います。
職務経歴書の限られたスペースに収めるのに比べ、十分なゆとりがある点でも有利です。
マナーでの失点が許されない40代の転職活動では、応募書類に「添え状」をつけるのが基本になるため、ここでの「あいさつ文」や「末文」は不要です。
志望動機書では、タイトルと前付け(日付、宛名、氏名)を添える程度で十分。
「志望職種」、「最終職歴」、「在職期間」「転職回数」などを冒頭に示しておくと、人物のイメージを特定しやすいのも事実ですが、職務経歴書の記載事項でもあるため、必須ではありません。
志望動機書にはA4のペーパー1枚分のスペースがあるとはいえ、いざ執筆してみると、思いのほか文字数は増えるものです。
【40代】志望動機と退職理由はこう作る
志望動機と退職理由は、互いの整合を念頭にまとめるのが基本です。
選ぶ基準は「最大の理由」「きっかけになった出来事」ではなく、保有スキル・経験との関連性が高く、入社への「熱意」と「こだわり」を伝えやすい事由からチョイスします。
そこで重要になるのが「建て前」。
もちろん嘘はNGです。
繰り返しになりますが、志望動機には理論破綻を起こしやすい性質があり、苦し紛れの嘘は簡単に看破されてしまいます。
本音のエッセンスを取り込んだ「建て前」こそが、志望動機・退職理由を作る上での重要な要素になります。
従って、40代の志望動機・退職理由の探し方は、「企業の採用意図」を念頭に、本心のなかから「嘘とはいえない理由」にアプローチしていく流れになります。
本音を掘り下げ、表現の仕方を「三段論法」で変えていくのがコツです。
参考までにイメージを挙げてみます。
すべてにおいて組織の理論を優先する職場に嫌気が差した
⇒顧客よりも組織の理論が優先される仕事のあり方に常々疑問を感じていた
⇒カスタマーファーストの経営姿勢にこそ自分のキャリアが生かせると確信した
事実が絡んでいる分、経験豊富な40代であれば、実体験に基づくエピソードなどもスムーズに引き出すことができます。
また自身の希望を示すのではなく「転職してでも叶えたい職務上の夢」や「プロの矜持」などをベースにした方が好印象を引き出せます。
とはいえ、志望動機と退職理由をひねり出しただけで、選考通過率を高めることはできません。
40代の転職希望者が示す志望動機・退職理由に「説得力」を持たせるには、以下に紹介する「書き方のコツ」が重要になります。
【40代】志望動機の書き方 基本編
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
構成の仕方と盛り込むべき内容
志望動機を一本の文章で仕上げるには、それ相応の技術が必要になります。
下手をすれば、プロが書いても冗長的で読みにくく、焦点の定まらない内容に仕上がってしまいます。
志望動機書は、簡単にスッキリとまとめるためにも、テーマ別に見出しを立てて記述していくスタイルがおすすめです。
先にご紹介した「志望動機書の例文」でいえば、「志望理由」「経緯」「貴社にこだわる理由」がこれに該当します。
また、志望動機書に盛り込むべき内容は、おおむね決まっています。
なかでも以下の3つは必須です。
- 志望理由と退職の経緯
- 具体的な貢献(応募企業で役立つスキルと実績)
- こだわりと熱意(応募企業でなければならない理由)
これを念頭に、「志望動機書の例文」を分解してみると、以下のイメージになります。
〇志望理由=具体的な貢献(応募企業で役立つスキルと実績)
〇経緯=志望理由と退職の経緯
〇貴社にこだわる理由=こだわりと熱意
志望動機書をまとめる上での最大のポイントは、これらを「有機的」に結び付け、ストーリーに一貫性を持たせる点にあります。
【40代】志望動機の書き方 実践編
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
この章のポイント
- 説得力のある文章の書き方
- 文字量を変えずに情報量を増やす方法
- 「具体的な貢献」をはじめとする項目別の書き方と注意点
志望動機は、いわば「なぜ当社なのか」という企業側の問いかけに答える作業です。
もちろん求人企業は「応募者の都合」や「職場としての魅力」などを知りたいわけではありません。
突き詰めると、企業側の関心は「志望動機・退職理由の妥当性」「即戦力としての力量」「本気度」の3点に集約されます。
つまり40代求職者の志望動機をめぐっては、先ほどご紹介した⓵志望理由と退職の経緯⓶具体的な貢献③こだわりと熱意ーーの3本柱からアプローチしていくのが正解になります。
とはいえ、無作為に必要情報を羅列したところで、書類選考に勝ち残ることはできません。
そこに「根拠」と「信憑性」がなければ、応募者そのものの価値が失われてしまいます。
では、文章に根拠と信憑性を持たせるにはどうすればいいのでしょうか。
数字を入れて「見える化」するだけではまだ足りません。
より有効なのは、背景説明を充実させることです。
分かりやすくお伝えするため、ひとつ例を挙げてみます。
✖あなたと同じで、私も野球が好きです。
〇あなたと同じで、私も野球が好きです。学生時代は草野球チームに所属していました。
いかがでしょうか。
背景説明を一文加えることで、発言の信憑性が高まり、説得力が出てきます。
志望動機書の作成も同じです。
背景説明による印象操作が欠かせません。
ただし、背景説明にもひとつ注意点があります。
文字量が増えることです。
また、組み立て方を誤ると焦点が定まらない「冗長的な文章」になります。
そこで必要になるのが文章の立体化(具体化)です。
文章を上手に立体化すれば、文字数を変えずに情報量を増やすことが可能です。
たとえば、以下のイメージです。
- ✖:目標到達に向けて、顧客への訪問活動を積極的に実施した結果~
- 〇:売上目標を逆算し、顧客訪問回数のノルマを自らに課した結果~
以上が文章をまとめる上でのコツです。
40代の転職は大きなハンデを背負っての戦いになりますが、ちょっとした工夫でその差を埋めることも可能です。
続いて「志望理由と退職の経緯」「具体的な貢献」「こだわり」「熱意」の書き方について、それぞれ項目別に解説してまいります。
志望理由と退職の経緯
経緯
前職では、創業以来続く一社完結の伝統のもとで(担当顧客〇社からの)追加業務の受注拡大に力を注いでまいりました。
お客さまから「お抱えのフィールドエンジニア」として信頼を賜っていることもあり、営業成績は〇年連続でベスト〇(昨年は〇支店の担当〇人中〇位)を維持しております。
ただ、一社完結型のビジネスモデルには、ラインアップの面に構造的な問題があり、運用上の次善策でお客さまの要望をカバーするにも、一個人の力だけでは限界がありました。
お客さまからビジネスパートナーとしての信頼を受けるほどに、「適切なソリューションを提供したい」という思いは増すばかりでした。
40代の節目に自らの仕事観を見つめ直すなか、長年のじくじたる思いと決別する決心を固め、現在に至ります。
志望動機と退職理由の詳しいまとめ方は前述の通りですが、作成に当たってひとつ注意せねばならないのが「書き出し」です。
とくに冒頭の一文は、書き手の印象を左右する重要なファクターになるため、「ネガティブな情報」から入るケースのは厳禁です。
退職理由の背景説明はその性質上、とりわけ否定的な内容になりがちですが、仮にマイナスの印象が尾を引くと、最悪の場合、応募者自身にいらぬバイアスがかかる恐れがあります。
以下に良い例と悪い例を示します。
〇前職では、創業以来続く一社完結の伝統のもとで(担当顧客〇社からの)追加業務の受注拡大に力を注いでまいりました。
✖前職では、お客さまの利益よりも「自社の都合」を優先する社風があり、真の顧客ニーズに応えることができませんでした。
「〇」の文章は、「受注拡大に力を注いできた」というポジティブな表現を用い、無難な滑り出しになっています。
転職のきっかけになった一社完結のビジネススキームも、あえて「創業以来続く伝統」という言葉で飾り、肯定的な印象を与えています。
逆に「✖」の文章には、2つの致命的な問題があります。
一つ目はいわずもがな、ネガティブな情報から入っている点。
批判的な情報からスタートさせてしまうと、執筆者の第一印象は必ずマイナス側に傾きます。
2つ目は、無防備に「前職の悪口」を書いてしまっていることです。
とくにこの一文からは「自助努力の痕跡」を読み解くこともできず、「前職への責任転嫁」の印象さえ受けます。
また、真の顧客ニーズというのも不明瞭で、独善的な印象を与えかねません。
仮に好意的に解釈しても「顧客重視の真面目な人柄」以外に伝わるものがありません。
否定的な情報の扱いは、冒頭の一文に限らず、常に細心の注意が必要です。
志望・退職理由をまとめる上で、前職を否定する場合は、「自助努力が及ばぬ根拠」を示す必要があります。
冒頭の例文から引用します。
ただ、一社完結型のビジネスモデルには、ラインアップの面に構造的な問題があり、運用上の次善策でお客さまの要望をカバーするにも、一個人の力だけでは限界がありました。
確かに、自助努力の軌跡と物理的な限界が表現されていますが、この一文だけでは「説得力がある」といえるまでには至りません。
これを補強するのが、前段の文章です。
お客さまから「お抱えのフィールドエンジニア」として信頼を賜っていることもあり、営業成績は〇年連続でベスト〇(昨年は〇支店の担当〇人中〇位)を維持しております。
実績と相まって、はじめて「職務に対する責任感を原動力に、退職を決断した仕事のできる人」という建前上の構図が成立しています。
前職を否定する情報を挿入する場合は、説得力のあるフォローとして「批評するに足る人物としての証明」や「否定的な見解の妥当性」などを示さねばならないわけです。
「伸びしろの少ない完成品」とみなされる40代にあって、配慮に欠ける志望動機書では、なかなか及第点はもらえません。
具体的な貢献
1、志望理由
〇〇市場への進出を目指される貴社の一戦力として、私のキャリアをお役に立てて頂きたく、求人に応募いたしました。
お役立ちのポイントとしましては、大きく⓵〇〇市場のお客さま〇社との太いパイプがある⓶(潜在的なニーズの所在を把握しているため)〇〇市場開拓の水先案内人が務まる――の2点になります。
「具体的な貢献」は、いわば応募者の即戦力としての価値を示すものです。
転職を目指す40代にとっての「最大のアピールポイント」となる分、採用担当者の興味と期待をダイレクトに揺さぶる「見せ方」を心がける必要があります。
では、何をどうすればいいか。
具体的な貢献は「志望動機書のつかみ」として、冒頭を飾るのが最も有効です。
商品のキャッチコピーさながらに、読み手の興味や期待感を誘う「インパクト」を持たせれば、さらに高い効果が期待できます。
ただし、採用意図のど真ん中を突くセールスポイントを示すには、次章で紹介する「企業研究」と「自己分析」が欠かせません。
企業研究と自己分析は、40代求職者にとって必須といえる作業です。
また、志望理由と銘打ちながら「応募企業へのラブコール」をつづらないのも実は大きなポイントです。
繰り返しになりますが、企業の求める人材は「ファン」ではなく「即戦力」だからです。
こだわり
2、貴社にこだわる理由について
私のキャリアが生きる場であり、また、営業哲学が一致している点からも、貴社への入社を強く希望しております。
〇〇から〇〇までをカバーする充実したサービスラインアップはもちろん、異業種との協業を進める実効性の高い事業戦略も〇〇業界では前例がありません。
お客さまに最適なソリューションを提供できるのは、貴社をおいて他にないものと確信しております。
また、カスタマーファーストの経営理念のもと、他社設備の無償メンテナンスに取り組む貴社営業部の営業マインドは、かねがねお客さまの口からも伝わってまいりました。
「担当顧客との相互利益」を追求し、20年のキャリアを重ねてきた身として、強く共感を覚える次第です。
実質的な志望動機は「応募企業でなければならない理由」(こだわり)を証明する形に仕上げます。
「なぜ当社なのか」という企業の根本的な問いに対する回答は、本音よりも「一貫性」と「根拠」が重要になります。
ただし志望動機書では、すべての項目で「オリジナルの理由」を提示するのが絶対条件です。
独自性に乏しい時点で、志望動機書全体の信憑性は著しく薄れてしまうためです。
たとえば以下の一文は、採用担当者にどんな印象を与えるでしょうか。
キャスタマーファーストを貫く貴社の経営理念に共感しました。
「ありきたりな志望動機」と思われるかもしれません。
実際、40代の応募者は「ありきたりの人材」と判断された時点で、書類選考での敗戦が濃厚になります。
ただし、重要なのは中身(根拠)です。
一般的にNGとされる「理念に共感した」という回答でも、しっかりとした根拠さえあれば問題ないわけです。
繰り返しになりますが、40代転職希望者が示す志望動機で重要なのは、「根拠」と「オリジナリティ」です。
続いて例文からの引用です。
「担当顧客との相互利益」を追求し、20年のキャリアを重ねてきた身として、強く共感を覚える次第です。
いかがでしょうか。
この一文だけでは、やはり言葉が上滑りするばかりで、まだまだ説得力に欠けます。
「それっぽさ」で誤魔化せるほど、40代の転職は甘くありません。
上段の例文の信憑性を補強するのが、以下に示す背景説明のセンテンスです。
カスタマーファーストの経営理念のもと、他社設備の無償メンテナンスに取り組む貴社営業部の営業マインドは、かねがねお客さまの口からも伝わってまいりました。
この一文を添えることにより、前段の文章の「根拠」と「オリジナリティ」を担保した格好です。
熱意
熱意を直接的に伝えるのは悪手です。
熱意は「伝わるように書く」のが肝要です。
最後に熱意を一言を添えると、文章の座りもよくなりますが、あくまでも「事前の布石」があってこそです。
以下に例文を挙げます。
「お客さま目線で社会の礎に」を企業スローガンとする貴社での営業活動は、長年顧客第一をモットーとしてきた私にとっての悲願といえます。ご縁を頂きました暁には、お客さまと貴社のため、誠心誠意尽くすことをお約束いたします。
いかがでしょうか。
これだけでは、言葉の重みを判断しかねます。
また、会社と顧客にどのように尽くすのかも分かりません。
やはり「根拠」に乏しいからです。
つまり、行間や文章全体の印象から熱意を伝えなければ、背景説明を抜きに最後に一言添えたところで、あまり効果は期待できないわけです。
とはいえ「行間から熱意を伝えるのは難しい」という方も少なくありません。
そんな方は、熱意に代わって、企業側のニーズに沿った「コミットメント」の示すのも手です。
イメージとして2つ例を挙げてみます。
- 前職では、部門別採算管理の枠組みのもとで社内調整役を務めました。まずは会社の一員として受け入れて頂く努力からはじめ、社内調整役としてもお役に立てるよう、組織コンフリクト解消に努めた前職での経験を生かしてまいる所存です。
- ご縁を頂きました暁には、〇〇分野の潜在的なニーズにつきましては、知り得る限りの情報を提供させて頂きます。
ただしコミットメントは「無責任な印象を生むリスク」と常に隣り合わせの関係にあり、実現可能な成果の範疇から出ないように注意する必要があります。
とくにデリケートな社内の実態は、関係者から直接情報を仕入れない限り、なかなかつかめるものではありません。
キャリアプランを示すのも手
志望動機書のスペースに少しゆとりのある場合は、熱意に代えて「キャリアプラン」を示すのも手です。
キャリアプランは将来に描く自身の理想とその具体的な道筋を示すもので、「伸びしろが乏しい」と思われがちな40代転職希望者に対する偏見を払しょくする意味でも効果的です。
キャリアプランを示す上で、押さえるべきポイントは3つあります。
- 当面の課題と実務の方向性
- ステップアップへのプロセス
- 目指すゴールのイメージ
採用担当者は「社風と応募者の相性」も大きな関心事です。
従って、志望動機書のなかに盛り込むべきは「1」、当面の課題と実務の方向性となります。
盛り込む内容として「会社に馴染む努力」は必ず押さえたいところです。
ちなみに「2」は組織のマネジメントや戦略策定業務、労務管理など、上級管理職に求められるスキルの「下地づくりのプロセス」を示すイメージでまとめます。
「3」は具体的な「職位」ではなく「立場なりの職責」として語るのが正解となります。
ただ、志望動機書のなかで触れるのは少し「早計」と捉えられる可能性がある上、文字数にも限りがあるため、「1」までにとどめておくのが無難です。
退職後の空白期間がある場合
退職から時間が経過し、年単位での「空白期間」がある場合は、書き振りに少し注意が必要です。
「前向きな退職理由」と「志望動機」を関連づけるのが難しくなるためです。
「顧客とのパイプ」や「業界の幅広い人脈」など、本来有効に機能するはずの情報も、下手な盛り込み方をすれば信憑性を疑われかねません。
「空白期間が生じた理由」の洗い出し・検討は必須といえます。
少なくとも「やむを得ない事情」をひねり出す必要があります。
また「空白期間に身につけた実務に役立つスキル・実績」なども、マイナス評価を和らげる補強材料になるため、上手くアピールしたいことろです。
ポイントのおさらい
- 根拠を明示するには背景説明が欠かせない
- 文字量を変えずに情報量を増やすには文章の立体化が有効
- 書き出しはポジティブに
- 前職を否定する場合は必ず自助努力の痕跡を残す
- 志望動機書の内容にひな形の流用は厳禁。すべてオリジナル情報で固める
- 熱意の根拠は行間からにじませるのがコツ
- コミットメントも有効だが一定のリスクを伴う
- 離職から一定期間過ぎた場合は退職理由の書きぶりに注意を
【40代】ライバルにもっと差をつけるには
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
別記事「自己PRの書き方」でも触れましたが、志望動機をまとめる上での材料集めには、やはり「企業研究」と「自己分析」が欠かせません。
理由は大きく2つあります。
- 「企業の求める人材像」と「応募者自身のスキル」のマッチング
- 「社風」に合わせた表現・トーンの調整
具体的な方法については、より詳しくまとめた別記事(職務経歴書・自己PRの書き方)と一部ラップしますが、あらためてご紹介します。
この章のポイント
- 企業研究の裏技
- 自己分析のポイントと注意点
- 推薦状の秘策
企業研究は「読む」と「聞く」で
企業研究は、いわば「企業が求める人材像」と「採用の意図」を探る作業です。
必要な材料は、求人情報に記載される仕事内容や応募資格、企業のウェブサイトなどから拾えます。
とくに企業文化の骨格や理念、経営のかじ取りの方向性をつかむ上で、「社長あいさつ」や「経営計画」、「ニュースリリース」などは必ず熟読しておきたいところです。
さらに有力な情報が得られる媒体は、専門紙(業界紙)です。
専門紙は一般紙とは比較にならないほど情報が深く、細かい業界の動きまで網羅しています。
業界の動向、展望を知るには、これ以上に参考になる媒体はありません。
一方、可能な範囲で企業研究を行った上で、必ずやっておきたい仕上げの作業があります。
それは、人事担当者に直接電話で問い合わせてみることです。
「たったこれだけ?」と思われるかもしれませんが、志望動機のクオリティは格段に高まります。
電話での問い合わせは、一般的な転職活動の盲点を突いた対応策で、第三者に任せず、自分で聞くのが最大のポイント。
企業の求める「人材像」と「採用の意図」は、肌感覚としてつかまねば意味がないためです。
採用担当者は一般的に、応募者管理や社内調整などに多忙を極めていますが、一時の遠慮は「残念な結果」として跳ね返ってくるのもまた事実です。
もう一段、深い情報を入手し、ライバルとの差を確かなものにしたい方は、関係者をたどって直接応募企業の社員から情報を得るのがおすすめです。
「答えそのもの」を簡単に拾える可能性が高まります。
「自己分析」にはキャリアの棚卸しを
一方の自己分析は「キャリアの棚卸し」を行うイメージです。
応募者自身の実績や強みは、企業からみた「人材の価値」そのものです。
求人情報に記載される「仕事内容」や「応募資格」を念頭に、自身のキャリアをきめ細かく振り返り、職務での活用を具体的にイメージしていくのがコツです。
強調すべきポイントを掘り起こす作業になりますが、自分の経験・スキルを取りこぼさぬよう、まず網羅的に書き出していくのがおすすめです。
「推薦状」に秘策も
推薦状は選考通過率を高める上での大きな支援になります。
元上司や応募企業にゆかりの深い知人に依頼するのも手ですが、より効果的なのは「応募先と取引のある企業」や「代議士」からの推薦状。
利害関係のある人物からの推薦を受けた応募者に対しては、採用側も軽率な扱いができなくなります。
依頼に際し、A4のペーパーにまとめたひな形を手渡すとスムーズです。
記入すべき内容はざっと以下のイメージ。
- タイトル(推薦状)
- 宛名
- 日付
- 氏名・肩書等
- 推薦への意思表明
- 人柄と推薦のポイント
- 印
ただし、とりわけ影響力の強いルートからアプローチは、いわゆるコネ入社同様、入社後の人間関係に一定の影響が出る可能性は否定できません。
ポイントのおさらい
- 企業研究は「読む」と「聞く」で
- 自己分析はキャリアの取りこぼしに注意を
- 推薦状があると選考通過率は格段に高まる
【40代】やってはいけない ありがちな志望動機のNG
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
40代のビジネスパーソンであれば、大抵の場合、志望動機の「地雷のありか」は思い浮かぶはずではないでしょうか。
労働条件への魅力ばかりを語ったり、ネガティブな退職理由を明かしたり。
「そんなことは当然承知している」という方も大勢いるはずです。
ただ、思いのほか「やってはいけない書きぶり」が目立つのも確かです。
ここまでお読みいただいた方にとっては「おさらい」に近い解説になりますが、以下に40代のベテランでもありがちなNGをまとめました。
持ち上げ過ぎる
思わずやってしまいがちですが、応募企業の魅力を強調し過ぎるのはNGです。
持ち上げ過ぎは、志望企業に対する「過度な期待」に映り、むしろマイナス評価を招くリスクがあります。
また、企業が求めるのはあくまでも即戦力であり、「ファン」と「プレーヤー」では立場が異なります。
仮に魅力のある商品を褒め上げるにしても、プレーヤーの視点で語らねばなりません。
具体性の欠如
志望動機のなかで一番多いミスが、説得力の乏しい内容です。
その原因の多くは、具体性に欠ける点にあります。
志望動機に説得力を持たせるには、背景説明が重要です。
極論すると、志望動機は「企業理念に共感した」でも構いません。
ただし、「企業理念が持つ力」を自身の経験から説き、「具体的にどの部分に共感し、どういう形で自分が役に立っていけるのか」を理論的に示す必要があります。
つまり、どんな志望動機であれ、口先だけではないことを立証しなくてはなりません。
オリジナリティの欠如
もちろん、求人企業による書類選考や面接は警察の取り調べではありません。
「建て前」は社会人としてのスキルともいえ、一定範囲内で許容されるのも確かです。
ただし、志望動機は「オリジナリティ」を失った時点でマイナス評価を免れ得ません。
ひな形通りの志望動機は、その最たる例です。
そこに実体験に基づく重い教訓や信念がみえてこない限り、「中身がない」「説得力がない」と判断されてしまいます。
本当のことを書く必要性は、何も理論破綻を防ぐためばかりではありません。
【40代】志望動機の書き方 まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は志望動機の書き方について、徹底解説しました。
まとめは以下の通りです。
志望動機全般
- 志望動機は採用担当者が重視する項目
- 志望動機に嘘はNG
- 志望動機書を提出すると差がつく
- 志望動機は企業の採用意図をにらんで絞り込む
- 志望動機・退職理由は三段論法で偽りなくひねり出す
- 退職後に空白期間がある場合は書きぶりに注意を
- 推薦状のある応募者は軽率な扱いを受けにくい
書き方のポイント
- 「志望理由と退職の経緯」「具体的な貢献」「こだわりと熱意」は必須
- 必要情報を有機的に結び付け、ストーリーに一貫性を持たせるのがポイント
- 各項目ともにオリジナルの理由が必須
- 説得力を持たせるには背景説明と文章の立体化が肝
- 熱意を直接的な表現で伝えるのはNG
志望動機の材料集め
- 企業研究は「読む」と「聞く」で
- 自己分析にキャリアの棚卸は欠かせない
最後までお読みいただき、ありがとうございました。