40代になるまで社会人を続けていると、誰しも一度くらい「勤め先を辞めたい」と感じたことがあるのではないでしょうか。
ともすると、今まさにその渦中にある人もいらっしゃるかもしれません。
ただ「40代の転職は難しい」という世間相場が邪魔をして、退職を現実の選択肢に加えられない人も多いはず。
検討しようにも、ちまたにみる情報は想像で書いたような一般論や真実味のない成功譚など、まるで当てにならないものばかりです。
そもそも、40代の退職をめぐる「本音の部分」は表面化しにくい事情もあります。
かくいう私は、実は40代妻子持ちの身でありながら、2017年に新聞社を退職した元新聞記者です(プロフィルは最下段)。
会社を辞めるタイミングを失さないよう、綿密な計画を立てるよりも先に行動に移しました。
結果、多くのものを失ってしまいました。
ただ、古巣に戻りたいと思ったことは一度もありません。
また、「得たもの」「気づいたこと」も少なからずあります。
今回は、40代での退職により「失ったもの」と「得たもの」についてまとめました。
いまの勤め先を辞めるかどうかを迷っている方も、すでに退職を決意された方も、参考にして頂けると幸いです。
Contents
40代の退職 永久に戻らぬもの
私は転職と独立の両にらみで、20年勤めた会社を退職しました。
結果、多くのものを失いましたが、大別すると「永久に戻らないもの」と「一時的に喪失したもの」の2つに分けられます。
このうち、「永久に戻らないもの」は古巣に置いてきた財産です。
- 社歴
- 肩書
- 人脈
- 決まった日に支払われる給料
- 自由に使える経費
- 名刺一枚で誰にでも会える特権
- 指示通りに動く部下や後輩
いざ字にしてみると、「少しもったいなことをした」とも思えます。
ただしこれらは、いまの私からすれば「惜しいもの」であっても、「必要なもの」ではありません。
むしろ「もう二度と古巣には戻りたくない」というのが本音です。
「きっと後悔する」と多くの諸先輩方に脅されましたが、それなりに何とかなるもので、いらぬ心配でした。
もう一方の「一時的に失ったもの」は、会社員としての特典をはく奪されることで消滅したものです。
「脱サラの代償」とも言い換えられます。
- 健康保険、厚生年金保険に加入できない
- 雇用保険や労災保険に加入できない
- 所得税の確定申告が必要
- 所得税、住民税の納付手続きが必要
- 福利厚生が利用できない
- 健康保険の傷病手当金が出ない
- ローンが組みづらい
こちらの方がダメージとしては大きいものの、再就職で挽回できる点で異なります。
さらに脱サラは、将来設計にかかわる「会社員の特典」も失う羽目になります。
- 安定した収入
- 老後の安全保障
- 社会的信用力
上記の3つの項目のうち、最後に挙げた社会的信用力は、決して「感覚的な問題」ではありません。
銀行融資の金利が不利になるばかりではなく、「マンションの賃貸審査に通らない」など実害を伴うものです。
とくに収入が不安定な個人事業主は家主に敬遠されがちで、現時点において、我が家が引っ越しするのは事実上不可能といえます。
つまり、下手をすれば「住む場所を確保するのも難しい」のがフリーランスの実態です。
私の場合、収入の減少を見込んで、会社を辞める前に家賃の安い一軒家に越しておきました。
ただ、脱サラには「サラリーマンにはない最高の特権」が得られるチャンスも巡ってきます。
一度知ってしまうと手放しがたくなる「人生の至宝の一つ」です。
それは何か。
ずばり「自分の意志で自由にできる時間」にほかなりません。
40代の退職 「自由な時間」の価値に気づく
退職後の最初の1年は、脱サラの可能性に重きを置きました。
そうしたなかでひとつ気づいたのは自分の意志で自由になる時間の価値です。
それこそ「人生の夏休み」さながらで、本当に充実した日々を過ごしました。
転職活動に勤しむ傍ら、10日以上に及ぶ家族旅行を実現したり、中古ゲームソフトの販売で生計を立ててみたり、片っ端から「やってみたかったこと」に挑戦しました。
もちろん「ワークスタイル」や「業種」などにもよりますが、極論すれば何にどれだけの時間を割くか、その選択もペース配分も思いのままです。
退職後に訪れる人生の夏休みは、独立を志す人だけでなく、再就職を検討している方にとっての「一時的な特権」にもなり得ます。
私の場合「最高の贅沢」と思えたのは、可愛い盛りの子どもと過ごし、成長を間近でみられたことでした。
爆発するような喜びの連続というよりも、「さりげない日々に感じる幸せの連続」といったところでしょうか。
体調不良の娘を保健室に迎えに行くのも、平日のショッピングモールを息子と歩くのも、初めての体験でした。
卒園式など「子どもの成長の節目」に縁がなかったからこそ、何でもない日常の一コマさえ、生涯忘れえぬ思い出になったのだと思います。
実際、子どもと過ごす時間には「賞味期限」があります。
本当に大切なものは「失って初めて分かる」といいますが、逆もしかりで、触れて初めて気づく価値もあるわけです。
もうひとつ、年老いた両親のために時間が割けるのにも魅力を感じました。
私の両親はいわゆる後期高齢者で、親孝行をするにも、心配をかけた罪滅ぼしをするにも、タイムリミットがあります。
スープの冷めない距離に家を借り、いつでも手助けできるようにしているのもそのためですが、サラリーマンではない宙ぶらりんの立場に(期せずして)身を置くことで、生活面でサポートすべき問題もフォローできるようになりました。
究極的には、時間を自由に扱える者こそが人生の勝者なのかもしれません。
自由時間で身に付けたのは…
自由な時間を過ごすなかで「自分で稼ぐ力」も得ました。
指導を仰いだのは、フリーランスの実力者や友人らです。
具体的には、ライティングのスキルでお金を稼ぐ方法やEC店舗の運営ノウハウなどを学びました。
物販やライティングなど自営の在宅ワークの魅力は「リスクの小ささ」です。
逆に投資も小さくなる分、大きなリターンは望めませんが、月に数万円レベルであれば、割合誰にでもできそうです。
少なくとも、収入の足らず分を補強するのには役立ちます。
ただし、在宅ワークには向き・不向きがあり、稼ぎには大きな差が出ます。
とくに物販は確固とした仕入れ先が決まっていない限り、手を出さないのが無難です。
また独学には限界があるのも事実ですが、ちまたにあふれる胡散臭い「有料情報」には注意が必要です。
40代の退職 ストレスからも解放
40代の退職をめぐっては、失ったものと得たもののほかに、「ストレスからの解放」も大きな戦利品といえます。
再就職を決めるまでの間、もしくはEC店舗をはじめとする在宅ワークに成功した暁には、朝の通勤ラッシュや首輪のようなネクタイ、家族との時間を奪う飲み会、休日出勤さながらの接待ゴルフなどとは無縁の生活を取り戻せます。
もちろん「職場の理不尽」ともおさらばできます。
ただし、これらの特典は「ワークスタイル」や「業種」に依存するところが大きいものといえます。
もちろん良いことばかりではない
時間の融通が利きやすく、リスクの小さい在宅ワーカーも、決して良いことばかりではありません。
確かに「自分の意志で自由になる時間」は人生で最高の財産です。
また「ストレスからの解放」には、最高のカタルシスが味わえます。
ただし、在宅ワーク一本で生活していくとなると、ハードルが非常に高くなります。
いわずもがな、数万円ほどの実入りで生計を立てるのは難しく、貯金ゼロでの参戦は限りなく勝算が薄いものといえます。
私の場合、計画性の欠如と能力不足がたたり、2年足らずで手にした退職金を全部使い切ってしまいました。
いまはパートに出る妻の稼ぎを当てにしながら、コツコツと貯めてきた貯金を切り崩しながらの生活を続けています。
少なくとも、「独立失敗の覚悟」と「再就職の選択肢」は外せません。
そんな生活が成立するか否かは「家族の理解が得られるかどうか」にかかっているものといえ、個人差が大きなところといえそうです。
また、フリーランスは環境の変化に弱く「誰も守ってくれないのが基本」だと痛感しました。
たとえばECサイトなど、大手企業の敷いたシステムのなかで立ち回る場合、「突然のルール変更」や「無法な競合相手の妨害」などに振り回されるケースも珍しくはありません。
とくに「簡単に稼げる」などとうたったビジネスモデルは誇大広告が多く、ちまたにあふれる情報をかき集めただけの「粗悪品」も少なくありません。
何より、向き・不向きがあります。
自分の力不足を差っ引いても、在宅ワーク一本での生活設計は、万人におすすめできるような道ではありません。
ただ、教育に対する国の支援が手厚いいまの時代、少々厳しい勝負に出たところで「子どもの将来にかかわる問題」にまで要らないのも確かです。
2020年4月には条件付きながら、私学高校の授業料の無償化も始まりました。
このあたりで人生を転換させたい人は、いわゆる博打にならぬ限り、思い切った行動に出るのもひとつの手です。
ただし繰り返しになりますが、勝算のない大きな投資は避けるべきです。
また、セーフティーネットとして「再就職」を視野に入れた設計にしておくのがベターです。
まともな生活ができなくなるリスクは?
収入は大幅に減っていますが、支出を抑えている分、生活レベルはさして落ちていません。
そもそも、贅沢な生活とはもともと無縁だったように思います。
そのうえで、よりコンパクトな生活を心がける一方で、適度な「ガス抜き」をしています。
節約にかかるストレスもほとんどないイメージです。
欲しいものは、ネットオークションで中古品を安くで手に入れ、相応の値段で手放します。
我慢するのは「新品の購入」といったところでしょうか。
もちろん貯金はできません。
それどころか、退職金分はすべて使い果たしてしまいました。
その一方で、目減りするスピードが徐々に緩やかになっているのも確かです。
正直なところ、ストレスのない日々に何度も堕落しかけましたが、それなりに努力しているといったところです。
最低限の文化的な生活を維持する上で一番重要なのは、「状況」でも「環境」でもなく、自分自身の行動力と判断力といえそうです。
最初にすべきは優先事項の見極め
3年ほどサラリーマンを離れたことで、人生設計の基本がみえてきました。
当たり前のことかもしれませんが、それは「人生の価値をどこに置き、何を重視するか」です。
私の場合、かつての生活に未練はありません。
何よりも「家族との時間」を欲しています。
そのため私に必要なのは「最大限の自由な時間」と「最低限のお金」です。
再就職するにせよ、独立するにせよ、ライフワークバランスの理想を描き、自分の人生での優先事項を見極めるのが何よりも重要ではないでしょうか。
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
ねこ吉
みふき
40代退職 失ったものと得たもの まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は私が40代で退職したことにより、失ったものと得たものについてご紹介しました。
転職活動中は、その過ごし方次第で「人生の夏休み」を味わうことも可能です。
またこの間、副業を身に付ければ、再就職先の幅が一段と広がるに違いありません。
ただし、ひとつだけ注意があります。
人生の夏休みどっぷりつかってしまうと、あまりの居心地の良さに「社会復帰」が難しくなるリスクがあるため、くれぐれもご注意ください。
まとめは以下の通りです。
- サラリーマンの立場を離れ一時的に失くしたものは安定した収入、老後の安全保障、社会的信用力の3つ
- 社歴のインセンティブや記者の特権は完全に失った
- 転職活動中に得た自由な時間は人生でも最高のひと時になった
- ストレスからも解放された
- 上手に脱サラすれば時間を自由に扱えるようになるがリスクも大きい
- 勝算のない投資をしない限り失敗しても一家が路頭に迷う心配はさそう
- 手軽な仕事と副業を組み合わせるのも道
最後までお読みいただき、ありがとうございました。